あの頃はもう、
何も残ってないと思ってました。
離婚して、
部屋に帰っても
真っ暗で。
誰もいない。
テレビもつけずに、
ただ壁見て座ってました。
何してもうまくいかない。
仕事でもミスばっかりで、
上司に詰められて。
「もう無理だな」って、
口に出したのを覚えてます。
頭の中がずっとぐるぐるして、
音が消えたみたいでした。
息子のことも考えたけど、
あいつには母親がいる。
俺がいなくても平気だろう、って。
そんなふうに思ってました。
夜、
風呂の水を張りながら、
このまま沈めば楽になるんじゃないかって
思った瞬間もありました。
でもそのとき、玄関に
置きっぱなしの息子の靴が
目に入ったんです。
まだ小さい靴。
汚れたまんま。
それ見たら、
なんか、
動けなくなりました。
涙も出ないまま、
朝になってました。