その平穏が壊れたのは、
同居していた母親が心筋梗塞で、
文字通り「ふと」死んだ時でした。
(父はすでに他界)
朝、居間で冷たくなっている母を見つけた時、
私の中に湧き上がったのは、
悲しみではなく、
ひどく事務的な戸惑いだけでした。
「あ、葬式とかどうすればいいんだろう」
「役所の手続き、面倒だな」
涙の一滴も出ませんでした。
自分の親が死んだというのに、
晩飯の献立を考える時と同じくらい、
私の心は平坦なままでした。
周囲の親戚が泣いているのを見ても、
私はどこか遠い場所から眺めているような気分でした。
四十九日が過ぎて、
広い家で一人になったとき、
急に怖くなりました。
これから先、
あと何十年もこの部屋で、
一人でエラーログを眺めて、
コンビニの弁当を食って、
誰とも喋らずに死んでいく。
その光景が、
頭に張り付いて離れなくなりました。
「俺の人生、なんなんだ、これ」
そう思った瞬間、
今まで誤魔化してきた
「孤独」や「絶望」や「虚無感」が、
何を考えていても
ふと考えてしまうようになってしまいました。
今まで淡々とやってきた仕事も、ゲームも、
ただ「自分を誤魔化している」という事実に
気づかないための目隠しだったんです。
それに気づいたら、
もう一歩も動けなくなりました。
8年間、一度も休まなかった仕事を、
無断で休みました。
会社から電話が来ても、
布団を被って震えていました。
3日経つと、
冷蔵庫の食い物がなくなりました。
でも、頭の中がずっとぐるぐるして、
吐き気が止まらない。
「もう無理だ。こんなに苦しい思いをあと何十年も続けるなんて、絶対に無理だ」
パニックのようになっていたのか、
酸欠でずっと鏡みつめて気持ち悪くなって、
気分悪いから風呂入って、
なのになおんなくて、
また気持ち悪くなってが繰り返していて
本当にずっと吐きそうで、
運動しているわけでないのに息が荒れていました
嗚咽もが止まりませんでした。
何回もうっとなって吐きそうになって
それが癖みたいになってました。
ゲームして気を紛らわせようにも
すぐ動悸がしてダメせした。
これから先もずっとこういうふうに、
何もなく、
これからもなにもないんだ。
ただ、時間を潰して、
死ぬだけと思っていました。
元々あまり我慢強くないと思うので、
耐えられない、無理だと思い、
死に方を調べようと思って、スマホを手に取りました。
ブラウザを開いて死に方を考えてました。
ふと、上のタブの方に、
数日前に見ていた「エロ動画」の画面がパッと出てきました。
「……うわっ」
さっきまで死ぬことを考えていたのに、
一瞬で「うわ、最悪だ」
という焦りが勝りました。
もし私がここで死んだら、
この画面のまま
警察や親戚にスマホを回収される。
慌ててタブを閉じました。
でも、閉じても閉じても、
私のスマホは「恥」で埋め尽くされていました。